富山地方裁判所高岡支部 昭和34年(わ)66号 判決 1960年3月22日
被告人 小竹与八郎 外二〇名
主文
被告人小竹与八郎を禁錮一年二月に処する。
被告人寺嶋弥作を禁錮一年に処する。
被告人二上源介を懲役六月に処する。
被告人大野致正を懲役三月に処する。
被告人大坪伝平を懲役三月に処する。
被告人泉達造を懲役四月に処する。
被告人辻敬一を懲役三月に処する。
被告人松本勝二を懲役十月に処する。
被告人坂井義次を懲役四月に処する。
被告人古谷健治を懲役八月に処する。
被告人小笹清一を罰金三万円に処する。
被告人西岡喜一を懲役三月に処する。
被告人七尾谷新二を懲役四月に処する。
被告人開太吉を罰金三万円に処する。
被告人伊東覚二を罰金三万円に処する。
被告人小竹勇一を懲役三月に処する。
被告人京角太作を懲役三月に処する。
被告人大滝恒次郎を罰金三万円に処する。
被告人小西弥寿一を懲役三月に処する。
被告人佐伯久敬を懲役三月に処する。
被告人水名伊作を罰金三万円に処する。
但し、いずれも本裁判確定の日から被告人二上源介、同泉達造、同松本勝二、同坂井義次、同古谷健治、同七尾谷新二に対してはそれぞれ五年間、被告人大野致正、同大坪伝平、同辻敬一、同西岡善一、同小竹勇一、同京角太作、同小西弥寿一、同佐伯久敬に対してはそれぞれ三年間、右各刑の執行を猶予する。
被告人小笹清一、同開太吉、同伊東覚二、同大滝恒次郎、同水名伊作において右罰金を完納することができないときは金五百円を各一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。
被告人小笹清一、同開太吉、同伊東覚二、同大滝恒次郎、同水名伊作に対しては各公職選挙法第二百五十二条第一項の五年間の期間を三年間に短縮する。
被告人小竹与八郎より金五千円を、同寺嶋弥作より金三十九万九千五百円を、同二上源介より金四万六千円を同大野致正より金一万七千円をそれぞれ追徴する。
被告人大坪伝平より押収に係る現金二万五千円(証第二号)を没収し、金五千円を追徴する。
被告人辻敬一より押収に係る現金一万円(証第三号)を没収し、金二千円を追徴する。
被告人松本勝二より金四万五千四百八十五円を追徴する。
被告人坂井義次より押収に係る現金一万八千円(証第五号)を没収し、金九千円を追徴する。
被告人古谷健治より金四万七千円を追徴する。
被告人小笹清一より押収に係る現金一万円(証第六号)を没収する。
被告人西岡喜一より金一万五千円を追徴する。
被告人七尾谷新二より押収に係る現金三万五千円(証第七号)を没収する。
被告人開太吉より金一万円を追徴する。
被告人伊東覚二より押収に係る現金一万円(証第八号)を没収する。
被告人小竹勇一より金一万二千円を、同京角太作より金七千九百九十五円をそれぞれ追徴する。
被告人大滝恒次郎より押収に係る現金一万円(証第九号)を没収する。
被告人小西弥寿一より金一万七千円を、同佐伯久敬より金一万五千円をそれぞれ追徴する。
被告人水名伊作より押収に係る現金一万五千円(証第十号)を没収する。
訴訟費用中、証人蒲田外治に支給した分は被告人小竹与八郎の負担とし、証人佐山長三郎、同松井秀治に支給した分は被告人坂井義次の負担とし、証人土倉宗明に支給した分はこれを二分し、その各一を被告人小竹与八郎、同寺嶋弥作の各負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人小竹与八郎及び同寺嶋弥作は昭和三十四年四月二十三日施行された富山県議会議員選挙に際し、高岡市選挙区から立候補した寺崎治作の選挙運動者で両名共同して同候補者の為その選挙運動を総括主宰した者、被告人二上源介、同大野致正、同大坪伝平、同泉達造、同辻敬一、同松本勝二、同坂井義次、同古谷健治、同小笹清一、同西岡喜一、同七尾谷新二、同開太吉、同伊東覚二、同小竹勇一、同大滝恒次郎、同水名伊作はいづれも右選挙区の選挙人で、同候補者の選挙運動者、被告人京角太作、同小西弥寿一、同佐伯久敬は夫々同候補者の選挙運動者であつたものであるが、
第一、被告人小竹与八郎は
(一) 同候補者が前記選挙に立候補の届出(同月八日届出)をなす以前において、同候補者に当選を得しめる目的で
1、昭和三十四年四月二日頃、同市定塚町三丁目四番地寺崎工業株式会社高岡出張所において、相被告人寺嶋弥作に対し、同候補者が前記選挙に立候補した際は同候補者のため投票並びに投票取纒等の選挙運動をせられたい旨を依頼し、選挙人或いは同候補者の選挙運動者の買収資金及び右選挙運動に対する報酬等一切を含めた趣旨で森田昇を介し現金十八万円を供与し、
2、同日頃同所で、同候補者が前記選挙に立候補した際は同候補者のため投票並びに投票取纒等の選挙運動をせられたい旨を依頼し、その報酬等の趣旨で被告人二上源介に対し現金三万円を供与し、
3、同月五日頃同所で同候補者が前記選挙に立候補した際は同候補者のために投票並びに投票取纒等の選挙運動をせられたい旨を依頼し、その報酬の趣旨で川崎為二、江淵義夫、寺拝喜一、児玉徳一、吉田金蔵、中山純一、牧長義雄以上七名に対し清酒二級酒約二升、蒲鉾二皿、ソーセージ一皿等約千五百円相当の酒食の饗応接待をなし、
4、同月七日頃同所で2記載と同趣旨で被告人小竹勇一を介して被告人大野致正に対し現金五千円を供与し以つて前記選挙に関し事前運動をし、
(二) 同候補者に当選を得しめる目的で、同候補者のため相被告人寺嶋弥作が投票並びに投票取纒等の選挙運動をするに当り、選挙人及び同候補者の選挙運動者の買収資金並びに右選挙運動に対する報酬等一切を含めた趣旨で同人に対し、
1、同月九日頃同市定塚町三丁目四番地寺崎候補選挙事務所で現金十万円を供与し、
2、同月十二日頃同所で現金十万円を供与し、
3、同月十六日頃同所で森田昇を介し現金十万円を供与し、
4、同月十七日頃同所で現金十万円を供与し、
(三) 同候補者に当選を得しめる目的で、同候補者のため投票並びに投票取纒等の選挙運動をすることを依頼し、
その報酬及び投票買収資金等一切を含めた趣旨で
1、被告人大坪伝平、同泉達造の両名に対し、同年四月八日頃前記選挙事務所で、現金三万円を供与し、
2、被告人辻敬一に対し
イ、同月九日頃同所で「高岡政治をよくする会」への寄附名義で現金一万円を供与し、
ロ、同月十一日頃同所で現金二千円を供与し、
3、被告人大野致正、同古谷健治、同小竹勇一、同佐伯久敬、同小西弥寿一(同佐伯、同小西に対しては投票の依頼なし)の五名に対し同月十二月頃同所で現金一万円を供与し、
4、被告人松本勝二に対し同所で、
イ、同月九日頃現金五千円を
ロ、同月十日頃現金一万円を
ハ、同月十一日頃現金五千円を
ニ、同月十三日頃現金二千円を
ホ、同月十四日頃現金五千円を
ヘ、同月十六日頃現金五千円を
ト、同月十七日頃現金五千円を
チ、同月十八日頃現金一万円を
リ、同月二十日頃現金五千円を
各供与し、
5、被告人坂井義次に対し同月十四日頃同所で現金三万円を供与し、
6、被告人古谷健治に対し同月十五日頃同所で現金五千円を供与し、
7、被告人開太吉に対し同月十七日頃同所で現金一万円を供与し、
8、被告人伊東覚二に対し同月十八日頃同所で現金一万円を供与し、
9、被告人二上源介に対し同月二十日頃同所で現金三千円を供与し、
(四) 同候補者に当選を得しめる目的で同候補者のため投票並びに投票取纒等の選挙運動を依頼し、その報酬を含めた趣旨で(後掲鈴木嘉一に対しては投票買収資金の趣旨をも含む)前記選挙区の選挙人にして同候補者の選挙運動者である
1、中山義一に対し同月十二日頃同所で現金五千円を供与し、
2、木原喜一に対し、
イ、同月十五日頃同所で現金五千円を供与し、
ロ、同月十八日頃同所で現金三千円を供与し、
3、鈴木嘉一に対し同月十七日頃同所で現金八万五千円を供与し、
4、三木勘蔵に対し同月十七日頃同所で現金千円を供与し、
5、大永みきに対し同月二十日頃同所で、現金二千円を供与し、
(五) 同候補者の選挙運動者渡辺喜作と共謀の上、同月十二日頃同市石瀬四百九十五番地渡辺仙一方で、右渡辺喜作において、前記選挙区の選挙人である蒲田外治に対し前記第一の(四)と同趣旨で現金二千円及び日本酒一升入壜詰二本(時価九百五十円相当)を供与し、
(六) 被告人松本勝二に対し、同月二十三日頃同所で同候補者に当選を得しめる目的で、投票取纒等の選挙運動をしたことに対する報酬として現金五千円を供与し、
第二、被告人小竹与八郎、同松本勝二の両名は共謀の上、右松本勝二において、前記第一の(三)と同趣旨で、右選挙区の選挙人にして同候補者の選挙運動者である
(一) 西海茂一に対し同月十日頃前記選挙事務所で現金五千円を供与し、
(二) 尾山要吉及び引網政雄の両名に対し、
1、同月十五日頃同所で現金五千円を
2、同月二十二日頃同所で現金五千円を
各供与し、
第三、被告人小竹与八郎、同松本勝二の両名は木村隆雄と共謀の上右木村隆雄において、前記第一の(三)と同趣旨で、前記選挙区の選挙人にして同候補者の選挙運動者である
(一) 小林幸作に対し同月二十二日頃高岡市伏木本町百七番地の同人方前道路上で、現金千五百円を供与し、
(二) 林利吉に対し、同日頃右小林幸作方で同人を介して現金千五百円を供与し、
第四、被告人寺嶋弥作は
(一) 同候補者に当選を得しめる目的で、同候補者の立候補届出前である同月六日頃前記寺崎工業株式会社高岡出張所で、被告人小竹勇一に対し、同候補者が前記選挙に立候補した際は同候補者のため投票並びに投票取纒等の選挙運動をせられたい旨を依頼し、その報酬等の趣旨で現金一万円を供与し、
以つて前記選挙に関し事前運動をし、
(二) 相被告人小竹与八郎から
1、同月二日頃前記寺崎工業株式会社高岡出張所で、前記第一、(一)の1の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら、森田昇を介し現金十八万円の供与を受け、
2、前記第一の(二)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら、
イ、同月九日頃前記選挙事務所で現金十万円の供与を受け、
ロ、同月十二日頃同所で現金十万円の供与を受け、
ハ、同月十六日頃同所で森田昇を介し現金十万円の供与を受け、
ニ、同月十七日頃同所で現金十万円の供与を受け、
(三) 同候補者に当選を得しめる目的で、同候補のため投票並びに投票取纒等の選挙運動を依頼し、その報酬及び投票買収資金等一切を含めた趣旨で
1、被告人二上源介に対し
イ、同月九日頃前記選挙事務所で現金一万円を供与し
ロ、同月十二日頃同所で現金三千円を供与し
2、被告人古谷健治に対し
イ、同月九日頃同所で現金一万円を
ロ、同月十一日頃同所で現金七万円を
ハ、同月十五日頃同所で現金六千円を
ニ、同月十七日頃同所で現金七千円を
各供与し
3、被告人大滝恒次郎に対し同月十日頃同所で現金一万円を供与し
4、被告人水名伊作に対し
イ、同月十六日頃同所で現金一万円を供与し
ロ、同月二十日頃同所で現金五千円を供与し
(四) 同候補者に当選を得しめる目的で、同候補者のため投票並びに投票取纒等の選挙運動を依頼し、その報酬を含めた趣旨で前記選挙区の選挙人にして同候補者の選挙運動者である
1、大永みきに対し同月十日頃同所で現金五千円を供与し
2、林与七に対し同月十三日頃同所で現金二千円を供与し
3、田畑喜太郎に対し同月十七日頃同所で現金千五百円を供与し
4、駒井太八郎に対し同月十八日頃同所で現金二千円を供与し
5、一家くに子に対し同月二十日頃同所で現金千円を供与し
(五) 梅野ゆき江及び梅野くいと順次共謀の上、右梅野くいにおいて同候補者に当選を得しめる目的で、同月十八日頃富山県射水郡大島村小島二千四百八十二番地津田幸治郎方で、同候補者の選挙運動者である右津田に対し、同候補者のため投票取纒等の選挙運動を依頼し、その報酬を含めた趣旨で現金二千円を供与し
(六) 同候補者に当選を得しめる目的で、同候補者のため投票取纒等の選挙運動を依頼しその報酬を含めた趣旨で
1、被告人京角太作に対し
イ、同月十日頃前記選挙事務所で現金一万円を供与し
ロ、同日頃同所で現金三千円を供与し
2、被告人小西弥寿一に対し同月十一日頃同所で現金一万円を供与し
3、被告人佐伯久敬に対し同月十二日頃同所で被告人大野致正を介し現金三千円を供与し
第五、被告人小竹与八郎、同寺嶋弥作の両名は共謀の上、同候補者に当選を得しめる目的で、同候補者のため投票取纒等の選挙運動をしたことに対する報酬として
(一) 同月二十三日頃前記選挙事務所で森田昇を介して
1、被告人大野致正に対し現金一万円を供与し
2、被告人佐伯久敬に対し現金一万円を供与し
3、被告人小西弥寿一に対し現金五千円を供与し
(二) 被告人寺嶋弥作において、被告人古谷健治に対し同日頃同所で現金七千円を供与し
(三) 被告人小竹与八郎において、被告人小竹勇一に対し同月二十五日頃同所で現金五千円を供与し
第六、被告人小竹与八郎、同寺嶋弥作の両名は同候補者の前記選挙運動に関する出納責任者ではなく、又出納責任者小池藤吉から文書による承諾を得ていないのにかかわらず、共謀の上、同月八日頃から同月二十五日頃迄の間に、前記選挙事務所で各自に或は森田昇又は長谷幸作を介して、別紙選挙運動費用収支報告書写の支出の部記載の支出(但し同支出中より選挙事務所の家屋費七千円及び電話料九千三十三円並びに四月二十三日広告費(拡声機)として山崎開進堂に二万四千円を支出した際割引を受けた四千円以上合計二万三十三円を控除する)十四万千四十九円の選挙運動費用の支出をし
第七、被告人二上源介は
(一) 被告人小竹与八郎から
1、同月二日頃前記寺崎工業株式会社高岡出張所で前記第一の(一)の2の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金三万円の供与を受け
2、同月二十日頃前記選挙事務所で、前記第一の(三)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金三千円の供与を受け
(二) 被告人寺嶋弥作から前記第四の(三)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら
1、同月九日頃同所で現金一万円の供与を受け
2、同月十二日頃同所で現金三千円の供与を受け
第八、被告人大野致正は
(一) 同月七日頃前記寺崎工業株式会社高岡出張所で被告人小竹与八郎から被告人小竹勇一を介し、前記第一の(一)の4(同(一)の2参照)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金五千円の供与を受け
(二) 同月二十三日頃前記選挙事務所で、前記第五の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら被告人小竹与八郎、同寺嶋弥作の両名から森田昇を介して現金一万円の供与を受け
第九、被告人大野致正、同古谷健治、同小竹勇一、同佐伯久敬、同小西弥寿一の五名は共謀の上、被告人古谷健治において、同月十二日頃同所で、被告人小竹与八郎から前記第一の(三)の趣旨(但し同佐伯、同小西には投票の依頼なし)で供与されるものであることの情を知りながら現金一万円の供与を受け
第十、被告人大坪伝平、同泉達造は共謀の上、同月八日頃同所で被告人小竹与八郎から前記第一の(三)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金三万円(証第二号はその一部)の供与を受け
第十一、被告人泉達造は同候補者に当選を得しめる目的で、同候補者のため投票並びに投票取纒等の選挙運動を依頼し、その報酬を含めた趣旨で前記選挙区の選挙人で同候補者の選挙運動者である
(一) 二川憲次に対し同月十五日頃高岡市二塚二千四百九番地玉川洞巌方で現金千五百円を供与し
(二) 林茂道に対し同日頃同市東藤平蔵百七十三番地の同人方で現金千円を供与し
(三) 石田太八に対し同日頃同市二塚千七百八十七番地の同人方で現金二千円を供与し
第十二、被告人辻敬一は被告人小竹与八郎から前記第一の(三)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら
(一) 同月九日頃前記選挙事務所で「高岡政治をよくする会」への寄附名義で現金一万円(証第三号)の供与を受け
(二) 同月十一日頃同所で現金二千円の供与を受け
第十三、被告人松本勝二は
(一) 同候補者に当選を得しめる目的で、同候補者の立候補届出前である同月六日頃、同市郷田十一番地料理旅館古市忠雄方において、前記選挙区の選挙人である西海茂一に対し、同候補者が前記選挙に立候補した際は、同候補者のため投票並びに投票取纒等の選挙運動をせられたい旨を依頼し、その報酬の趣旨で千六百五十五円相当の酒食の饗応接待をし、以つて前記選挙に関し事前運動をし
(二) 被告人小竹与八郎から前記第一の(三)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら
1、同月九日頃前記選挙事務所で現金五千円
2、同月十日頃同所で現金一万円
3、同月十一日頃同所で現金五千円
4、同月十三日頃同所で現金二千円
5、同月十四日頃同所で現金五千円
6、同月十六日頃同所で現金五千円
7、同月十七日頃同所で現金五千円
8、同月十八日頃同所で現金一万円
9、同月二十日頃同所で現金五千円
の各供与を受け
(三) 被告人小竹与八郎から同月二十三日頃同所で前記第一の(六)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金五千円の供与を受け
(四) 同候補者に当選を得しめる目的で、同候補者のため投票並びに投票取纒等の選挙運動を依頼し、その報酬を含めた趣旨で前記選挙区の選挙人にして同候補者の選挙運動者である
1、尾山要吉に対し
イ、同月十三日頃高岡市伏木本町六十九番村樋爪久二方で現金千円を供与し
ロ、同月十五日頃前記選挙事務所で現金二千円を供与し
2、樋爪久二に対し
イ、同月十六日頃前記同人方で現金三千円を供与し
ロ、同月十八日頃同所で現金二千円を供与し
(五) 前記第十三の(四)と同趣旨で、同月十四日頃同市伏木古府一番地飲食店大番こと荻原道子方で、前記選挙区の選挙人にして同候補者の選挙運動者西海茂一及び里秀雄に対し一人当り九百三十円相当の酒食の饗応接待をし
第十四、被告人坂井義次は
(一) 同月十四日頃前記選挙事務所で被告人小竹与八郎から前記第一の(三)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金三万円(証第五号はその一部)の供与を受け
(二) 同候補者に当選を得しめる目的で、同月十六日頃同市千石町四丁目黒田銑鉄鋳造所事務室で、前記選挙区の選挙人にして同候補者の選挙運動者中山義一に対し、同候補者のため投票並びに投票取纒等の選挙運動を依頼し、その報酬を含めた趣旨で現金三千円を供与し
第十五、被告人古谷健治は
(一) 同月十五日頃前記選挙事務所で被告人小竹与八郎から前記第一の(三)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金五千円の供与を受け
(二) 被告人寺嶋弥作から前記第四の(三)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら
1、同月九日頃同所で現金一万円の供与を受け
2、同月十一日頃同所で現金七万円の供与を受け
3、同月十五日頃同所で現金六千円の供与を受け
4、同月十七日頃同所で現金七千円の供与を受け
(三) 被告人小竹与八郎、同寺嶋弥作の両名から同月二十三日頃同所で前記第五の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら被告人寺嶋弥作を経て現金七千円の供与を受け
(四) 同候補者に当選を得しめる目的で、同候補者のため投票並びに投票取纒等の選挙運動を依頼し、その報酬及び投票買収資金等一切を含めた趣旨で
1、被告人小笹清一に対し同月十七日頃同市定塚町二丁目千四百六十番地小池藤吉方で現金一万円を供与し
2、被告人西岡喜一に対し同月十八日頃同市定塚町四丁目千百十八番地の被告人古谷宅で現金一万五千円を供与し
3、被告人七尾谷新二に対し同月二十日頃前記選挙事務所で現金三万五千円を供与し
第十六、被告人小笹清一は同月十七日頃同市定塚町二丁目千四百六十番地小池藤吉方で、被告人古谷健治から前記第十五の(四)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金一万円(証第六号)の供与を受け
第十七、被告人西岡喜一は同月十八日頃同市定塚町四丁目千百十八番地被告人古谷健治方で、同人から前記第十五の(四)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金一万五千円の供与を受け
第十八、被告人七尾谷新二は同月二十日頃前記選挙事務所で、被告人古谷健治から前記第十五の(四)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金三万五千円(証第七号)の供与を受け
第十九、被告人開太吉は同月十七日頃同所で、被告人小竹与八塚から前記第一の(三)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金一万円の供与を受け
第二十、被告人伊東覚二は同月十八日頃同所で、被告人小竹与八塚から前記第一の(三)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金一万円(証第八号)の供与を受け
第二十一、被告人小竹勇一は
(一) 同月六日頃前記寺崎工業株式会社高岡出張所で、被告人寺嶋弥作から前記第四の(一)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金一万円の供与を受け
(二) 同月二十五日頃同所で、被告人小竹与八郎、同寺嶋弥作の両名から前記第五の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら被告人小竹与八郎を経て現金五千円の供与を受け
第二十二、被告人京角太作は
(一) 被告人寺嶋弥作から前記第四の(六)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら
1、同月十日頃前記選挙事務所で現金一万円の供与を受け
2、同日頃同所で現金三千円の供与を受け
(二) 同候補者の当選を得しめる目的で、同月十日頃同市定塚町一丁目飲食店田牧屋で、同候補者の選挙運動者御後稔、京角二作、北角弘義、中町信義、山下隆広、北角太作、荒屋芳太郎、京角才一郎、京角正雄、北角繁作、上谷繁作、前川勇吉、鈴木文一、長井尚之、長井嘉則、長谷川秀雄、長井務、鈴木慶一、竹中太一郎、計十九名に対し同候補者に当選を得しめる目的で同候補者のため投票取纒等の選挙運動を依頼し、その報酬の趣旨で一人当り四百十五円相当の酒食の饗応接待をし
第二十三、被告人大滝恒次郎は同月十日頃前記選挙事務所で、被告人寺嶋弥作から前記第四の(三)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金一万円(証第九号)の供与を受け
第二十四、被告人小西弥寿一は
(一) 同月十一日頃同所で、被告人寺嶋弥作から前記第四の(六)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金一万円の供与を受け
(二) 同月二十三日頃同所で、被告人小竹与八郎、同寺嶋弥作の両名から森田昇を介し前記第五記載の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金五千円の供与を受け
第二十五、被告人佐伯久敬は
(一) 同月十二日頃同所で、被告人寺嶋弥作から被告人大野致正を介し前記第四の(六)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金三千円の供与を受け
(二) 同月二十三日頃同所で、被告人小竹与八郎、同寺嶋弥作の両名から森田昇を介し前記第五の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金一万円の供与を受け
第二十六 被告人水名伊作は被告人寺嶋弥作から前記第四の(三)の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら
(一) 同月十六日頃同所で現金一万円(証第十号はその一部)の供与を受け
(二) 同月二十日頃同所で現金五千円(証第十号はその一部)の供与を受け
たものである。
(証拠の標目)
判示冒頭事実中
被告人小竹与八郎、同寺嶋弥作が昭和三十四年四月二十三日施行された富山県議会議員選挙に高岡市選挙区から立候補した寺崎治作候補のために、その選挙運動全般を総括主宰した点につき
(一) (1)森田昇の検察官に対する昭和三十四年五月十八日附供述調書第三項中同人の供述として「小竹与八郎は昭和三十四年三月頃から寺崎治作の出馬を強く要請して居られた模様で、選挙戦が始つてからは寺崎派の運動員の中心となつて選挙運動全般の指揮並びに情勢の把握等をして居られました」旨の記載(2)同人の検察官に対する昭和三十四年五月十九日附供述調書中第五項の「選挙運動期間中、小竹与八郎並びに寺嶋弥作の両名は毎日事務所に出られ、外来者との応待並びに選挙資金の取扱をして居られ、此の二人が選挙運動の総括的な責任者となつて選挙運動を指導して居られたと私は見ている」旨の記載
(二) 被告人古谷健治の検察官に対する昭和三十四年五月十六日附供述調書第一項乃至第三項中同人の供述として「選挙事務長の寺嶋弥作は過去三回の寺崎治作の選挙に際し今回と同様選挙事務長と云う立場で選挙運動の中心となつて運動員を指揮して居られ、今回の選挙に際しても選挙戦の初から終りまで高岡市内全般つまり全投票区について選挙運動の採配を振つて居られました。運動資金の支出即ち正規な支出や裏資金の支出の両方共取扱つて居られたのであります。事務所には事務長室が設けられ、過去の経験もあり、事務所内では運動員や労務者の中心となつて居られた。選挙対策委員長の小竹与八郎は今回は市会議員に出ないで専ら寺崎さんの選挙運動に働いて居られ、事務長の場合の様に特別な部屋は事務所内に設けてなかつたが事務長室、応接室等を利用してお客さんの接待等に当つて居られ、寺嶋さん同様選挙戦の初から終り迄事務所に顔を出し、他の運動員達の指示監督をして居られました。四月二十日頃事務所で開かれた票読みには寺嶋弥作と小竹与八郎がその場に参集した各地区の責任者に対し得票の見込数を訊ねて居られました。寺嶋弥作と小竹与八郎との間で例えば投票取纒めの受持区域が区分されて居たと云うような事は無いと思う。二人共全投票区つまり高岡市全般の寺崎派の選挙運動の中心となつてお互いに手を組んで寺崎が当選出来るように運動をして居られた。裏の運動資金も寺嶋弥作と小竹与八郎の二人が取扱つて居られ、運動員は右両名からのみ資金を貰つていました。普通は一人が選挙運動の中心となり統制を執つて運動をやると云う事も考えられるが今回の場合は、寺崎さんが八日の晩から二十日の晩迄つまり選挙の期間中大半を留守いして居たので、寺嶋、小竹の合議制で寺崎派の選挙運動を指導して居られた」旨の記載
(三) 被告人小竹勇一の検察官に対する昭和三十四年五月十二日附供述調書(検証第三号の分)中同人の供述として「寺崎候補が選挙期間中不在の為選挙運動の態勢を整備して選挙戦に臨む必要上、昭和三十四年四月六日頃寺崎の妹婿橋本栄太郎を中心とし、その下で寺嶋弥作は一般的方面を、坂井義次はその補佐として、小竹与八郎は下請の互親会方面を、古谷健次はその補佐として夫々担当すると云う選挙布陣が樹立されたが、選挙戦に入つてから、橋本栄太郎が地元の人でない関係上浮上り、事実上の寺崎候補の選挙運動の総元締は小竹与八郎、寺嶋弥作の両名となり右選挙布陣が乱れ、寺嶋弥作の一般関係と小竹与八郎の下請関係が混同し、古谷健治は小竹与八郎のみならず寺嶋弥作の補佐となり、坂井義次は孤立する形勢となつた。尚小竹与八郎、寺嶋弥作は裏資金即ち買収資金を夫々有し分配していた。」旨の記載
(四) 被告人大野致正の検察官に対する昭和三十四年五月十三日附供述調書第六項中同人の供述として「私は今度の県議会議員選挙に際しては寺崎治作が不在となる為、寺嶋さんが選挙運動の中心になられることは判つて居たが、小竹与八郎も主体になる事は考えて居らず、今度の選挙には寺嶋さんと共に元高岡市会議員の坂井義次が主体になるものと予想していた。小竹与八郎は前回迄の選挙時には本人が市会議員に出る関係で寺崎さんの選挙事務所に何時も来て居る暇がなく時々顔を出して居られる程度であつたが、今度の選挙にはわざわざ市会議員に出るのを止めて寺崎さんの県議選の運動を主体となつてやられる事になつたものの様ですが、坂井義次が主体にならなかつた事に対し、不満とするものもあつた。結局今度は選挙対策本部長小竹与八郎と、選挙事務長寺嶋弥作の両名が中心となつて選挙運動が進められた。」旨の記載
(五) 被告人松本勝二の検察官に対する昭和三十四年五月十四日附供述調書中同人の供述として「寺崎候補の選挙運動に対する親玉格は寺嶋事務長と参謀長の小竹与八郎で、此の二人が一番重要な役割を持つて居られ、採配を振つて居られた」旨の記載
(六) 被告人坂井義次の検察官に対する昭和三十四年五月十五日附供述調書(第三回)第六項第七項中同人の供述として「私と寺嶋弥作とは今回の選挙迄深い交際はなかつたが、今回の選挙では寺崎の後援会を結成するに当つて、寺嶋弥作が会長となり、私が理事長となりこれが引続き選挙事務所開設に当り、寺嶋弥作が事務長で私が副事務長という関係になつて密接な間柄におかれた。然し乍ら寺嶋さんが事務所に殆んど詰め切りであつたため、事務長に代つてする仕事がなく、殊に私が四月八日から十四日迄一週間旅行等の為、事務所へ顔を出さなかつた為に兼務の情報部長の地位も其の留守中に選挙対策委員長の小竹与八郎に移つて居り、その儘私はいわづどちらつかずの状態でした。選挙運動に於ける責任の主体は勿論事務長の寺嶋弥作になつていましたが、一方又選挙対策委員長の小竹さんの立場も私の見た目から実力的には小竹さんの方が寺嶋さんより少し重かつた様に感じた。それは実際問題として小竹与八郎は現役の市会議員であり、それ丈に市内の選挙情勢に就いても詳しかつたからで、現に情報部長だつた私の地位も其の後小竹さんが受持つて居られ、又其の後私が提唱して居た農政クラブ干係の市会議員候補者への陣中見舞金も小竹さんが自ら訪問して持つて行かれたと聞いている。勿論小竹与八郎と寺嶋弥作の両名は何事も相談してやつて居られた様です。」旨の記載
(七) 被告人小竹与八郎の司法警察員に対する昭和三十四年五月十一日附供述調書中同人の供述として「今度の選挙について、私は別に総括主宰者という名称は附されて居りませんでしたが実際的には事務所でやはり中心的な役割を果していた。今度の選挙では寺崎さんから特に信任を受け、選挙で最も重要な裏資金を直接預けられるという立場にもなり、四月八日から二十日迄の候補者の不在中特に候補者に代り十二、三日頃から十六、七日頃迄の間に市内の十八農協組合を前後二回乃至三回に亘つて訪問し、農村部の票獲得に努力する等真剣に努めた。そして期間中各運動員から報告を受け、その相談にのり、又これに対するお願いをすることもあつた訳ですが、これはやはり私と寺嶋弥作とがやつたものである」旨の記載
(八) 被告人小竹与八郎の検察官に対する昭和三十四年五月十九日附供述調書第二項乃至第十項中同人の供述として「昭和三十四年四月六日高岡市所在よしのや旅館で選挙対策が協議され、選挙に臨む陣容は選挙事務長寺嶋弥作、選挙対策委員長小竹与八郎、その他顧問として元代議士土倉宗明等の人選が決定されましたがその際出席者から寺崎候補は東南アジアへ旅行して不在になるのだから選挙について不利を免がれないから統制ある選挙運動をなす為、運動の中心となる者が必要だが寺嶋は三回も選挙事務長の経験があるから今度も選挙事務長として、私には選挙対策委員長として両名が協力して選挙運動の中心となり運動を統制して欲しいとの要望があり、私と寺嶋さんはそれを承諾した。同年四月七日立候補の挨拶廻りの自動車中で私は寺崎さんから「留守にするから、あとは寺嶋と協力してやつてくれ、選挙資金としてもう八十五万円預けて置くから適当に使つてくれ」と云われました。四月九日頃私と寺嶋さんとは相談の上、選挙事務所に居た運動員等に対し、交々激励演説をしました。又私と寺嶋さんとは毎日選挙情報を提供してくれる多数の人と会いそれから得た情報を夫々持寄つて票読みをして居りました。そして悪い情勢があるとその方面担当の運動員に金を渡す等適当な手を打ちました。四月十七、八日頃選挙情勢が面白くないと感じ私と寺嶋さんは相談の上、同月十九日午後五時頃選挙事務所へ五十名余りの運動員を集め、私と寺嶋さんと交々激励演説をしました。なお又遊説部の者を激励したり、その報告を聞いたり、個人演説会や街頭演説の行動範囲についても私と寺嶋さんが遊説部の者と相談の上決定しました。出納責任者小池藤吉は単に名目的存在で正当な選挙費用の支払は私が寺崎治作から受取つた合計百八十五万円の中から私と寺嶋さんの二人がやつて居りました。他方私と寺嶋さんは各自選挙運動員に謝礼を出す前、或いは出してから後で相互に連絡し、出来る限り同一運動員に謝礼が重復しない様にして居りました」旨の記載
(九) 被告人小竹与八郎の検察官に対する昭和三十四年六月八日附供述調書中同人の供述として「今回の選挙では出納責任者小池藤吉は出納責任者として取扱う選挙運動責用は寺崎候補やその他の誰からも受取つて居らず、又選挙事務所には偶々顔を出す丈で出納責任者として選挙運動費用の支出等は全然して居なかつた。選挙運動期間中、正当な選挙運動費用や私並びに寺嶋さんが運動員に謝礼としてあげた金は全部寺崎候補から私が自由に処分する様にとの事で森田昇に保管させていた百八十五万円の中から支出した訳です。結局私と寺嶋さんの二人が選挙運動の中心になつた事は勿論、合法非合法な金の支出は全部私と寺嶋さん二人で支出したのであつて謂わば、寺崎候補の選挙運動は、私等二人で万事その責任においてやつたと云えます」旨の記載
(十) 被告人寺嶋弥作の司法警察員に対する昭和三十四年四月二十八日附供述調書第十二項中同人の供述として「選挙事務長であつた私の仕事の概略は、毎日選挙事務所に参り、各方面からの来訪者の挨拶を受けたり、各運動員から報告される選挙情勢を検討したり、選挙地盤の検討を試みたり、五日目毎に票読みをやつたりして選挙全般を眺めて参つた。
尚最終的に私が読み上げた票読みは八千五百票と見て居たが、七百票程違い、これは伏木方面に於ける運動不足と今一つは先生が期間中留守であつたという事が最も大きな原因であると思つて居ります」旨の記載
(十一) 被告人寺嶋弥作の検察官に対する昭和三十四年五月十六日附供述調書第一項乃至第十三項中同人の供述として「私は昭和二十二年、同二十六年、同三十年の三回富山県議会議員選挙に寺崎治作の為選挙事務長をつとめたこと(何れも同人は当選)四月七日頃寺崎治作の支持者が選挙運動に臨む陣容を協議し、顧問として元代議士土倉宗明――選挙事務長寺嶋弥作、選挙対策委員長小竹与八郎等が決定されました。小竹与八郎は二期市会議員を勤めた人で、今回の市会議員選挙に立候補せず、専ら寺崎先生の運動をすることになつた人で寺崎先生と遠縁に当る人である。尚右決定の際出席者から寺崎候補は不在になるから統制ある選挙運動の推進をなす為運動の中心となる者が必要だから私と小竹与八郎がその中心になつて呉れとの意見があり、私と小竹さんはそれを承諾した。私は寺崎先生から四月七日、八日の両日に二、三回留守になるから皆を激励して仲良くやつてくれと云わましたが、それは私が嘗つて選挙事務長を三回もつとめた経験もあるので私が運動の中心となつて皆を激励し、仲良く運動する様にと云う意味と解しましたが先生もその積りで云われものと思います。
なお私からも先生に八日事務所で現在の状況では当選は間違いないと思うが先生が留守になられるのでとにかく皆を激励してやつてみると云つておきました。選挙運動に入つた当時は私と小竹さんは私は一般人に対する選挙運動を統括し、小竹さんが寺崎工業の下請業者二十五、六名で組織している互親会の会長である関係上これらの事業会社等やそれと関係ある人達に対する選挙運動を統括して行くという構想で居りましたが、選挙運動というものは截然と区分出来る訳のものではないので結局二人で全般を見て行くという風になつた。
私が選挙運動期間中選挙運動の中心となつて運動を統制する方法としてやつたことは選挙運動員に対する激励演説、私と小竹さんの二人で選挙情勢の交換、票読み、情勢判断、対策の協議をしたこと、個人演説会や街頭演説の開催について、遊説班に対する指示等でありました。出納責任者小池藤吉は単に名目上の出納責任者で実際の事務は高岡製紙の社員長谷幸作がして居た。然し長谷は現金を保管して居なかつた関係上、適法な選挙費用を支出する際大体私と小竹さんが持つて居る運動資金で支出しておりました。従つて出納責任者の為すべき仕事も私や小竹さんがしていた状態です。
選挙運動期間中選挙情勢の把握の為に、多数の事務所に出入する運動員や選挙関係人に応待する必要があつたのですが、これらの人達は、私達二人を選挙運動の中心者と考えた訳でしようが、私達二人に会いに来るのが普通であり、私や小竹さんは毎日事務所に出てその応待に当つておりました。私や小竹さんから運動員等に対して謝礼の金を差上げた時は爾後に連絡し、同一人に私達両名から重復して出さない様にして居りました。とにかく私と小竹さんが連絡或いは相談して寺崎先生の選挙運動全般を牛耳つていたことは間違いありません」旨の記載判示冒頭事実中(1)被告人京角太作、同小西弥寿一、同佐伯久敬を除くその余の被告人等がいずれも昭和三十四年四月二十三日施行された富山県議会議員選挙に際し、前記選挙区の選挙人で、候補者寺崎治作の選挙運動者(2)被告人京角太作、同小西弥寿一、同佐伯久敬がそれぞれ同候補者の選挙運動者であつた事実につき
(十二) 後掲同被告人等の司法警察員および検察官に対する各供述調書中右判示事実関係部分(なお右(1)の事実については高岡市選挙管理委員会委員長豊本清策作成に係る「回答」と題する書面十八通をも採証)
被告人小竹与八郎関係の判示全般事実(判示第一乃至第三、及び第五、並びに第六=第五並びに第六の証拠については後出参照)につき
(争点に対す判断)
本件において主要な争点である被告人小竹与八郎、同寺嶋弥作が昭和三十四年四月二十三日施行された富山県議会議員選挙に高岡市選挙区から立候補した寺崎治作候補の選挙運動を総括主宰したものかどうかの点につき、ここに改めて判断を加えることとする。
第一、(一)公職選挙法にいわゆる「選挙運動を総括主宰した者」とは「特定の候補者のため、選挙運動の中心となつて、その選挙運動を全面的に総括支配した者」と解すべきであり
(二)また総括主宰者は必ずしも一人に限らず、数人が合議で選挙運動を総括する場合には、それらの者はいずれも総括主宰者と解するのが相当である。
第二、本件についてこれをみると、前掲各関係証拠を総合すれば、被告人小竹与八郎、同寺嶋弥作の両名は、前記選挙に際し、高岡市選挙区から立候補した寺崎治作のため選挙運動をしたものであるが、
(一)被告人小竹与八郎は右寺崎が社長をしている寺崎工業株式会社の下請負業者で結成する親睦団体たる互親会の会長を勤め、平素から右寺崎の信頼が厚かつたところ、同人が選挙運動期間中東南アジヤへ旅行し選挙区を留守にするので、中心となつて選挙運動を推進する者が必要となつたところから、同人および主要な選挙運動者等より一致して被告人寺嶋弥作と共に選挙運動の中心となつて、その運動を推進するようにとの推挙を受けてこれを承諾し、選挙対策委員長の肩書で、同候補者のため相被告人寺嶋弥作と共に選挙運動の中心となつて同人と合議の下に(1)選挙運動者等に対し、必勝を期して強力に選挙運動を展開するよう激励して鼓舞し、特に情勢不利と判断した場合、運動者等を集合して、投票獲得に一段と努力するよう督励し、態勢の好転に奔命し(2)選挙運動例えば演説の行動範囲等についても相被告人寺嶋弥作と協議の上、決定し(3)右寺嶋と共に選挙事務所に毎日出て、同人等を訪ねる選挙運動者や選挙関係人等多数の人々に面接し、これらの人々から集まる選挙情報を聴取して票読みをし、情勢の悪い方面に対してはそれぞれ適当な手を打つ等して、その対策を講じ(4)出納責任者小池藤吉は単なる名目的存在で、事実上の出納面の実権を握つていたのは被告人小竹与八郎と相被告人寺嶋弥作の両名であつたので、右被告人小竹は相被告人寺嶋と協議して事実上出納事務をも遂行し、また右被告人小竹は同候補者から選挙運動資金百八十五万の処分方を任かせられていたので、相被告人寺嶋と協議の上、同資金を選挙費用として支出しおよび運動報酬や買収資金等として授受し、その他選挙運動期間中、終始高岡市選挙区の全地区にわたり、選挙運動を全面的に総括支配したものであり
(二)被告人寺嶋弥作は本件選挙の以前に施行された富山県議会議員選挙に際し、寺崎治作の為に選挙事務長をつとめ、同人を当選せしめたことが三回にも及ぶところから、本件選挙でも右過去の経験と力量を高く評価されていたが、前記のように寺崎治作が選挙運動期間中東南アジヤへ旅行し選挙区を留守にするので、中心となつて選挙運動を推進する者が必要となつたところから、同人並びに主要な運動者等から一致して被告人小竹与八郎と共に今回の選挙運動の中心となつてその運動を推進するようにとの推挙を受けてこれを承諾し、選挙事務長の肩書で、第二の(一)記載のように、同候補者のため、相被告人小竹与八郎と共に、選挙運動の中心となつて、同人と合議の下に、右第二の(一)の(1)ないし(4)記載の選挙運動を統括し、その他選挙運動期間中、終始、高岡市選挙区の全地区にわたり、全面的に選挙運動を総括支配したもの
であることがそれぞれ認められる。
第三、他方弁護人は本件選挙運動に於ける総括主宰者は土倉宗明であると主張するので、同人の右運動に於ける立場、地位、並びに役割等について検討を加える。前掲各関係証拠および証人土倉宗明の当公廷における供述等により認められる同人は富山県に於ける衆議員議員の当選歴は過去六回に及び自由民主党富山県連支部の顧問であるが、寺崎治作とはかねてより親交があり本件選挙に際し、諸般の情勢から容易に立候補の意思を表明しなかつた同人に対し、強く立候補を要請し、同人をして立候補の決意を表明せしめるに力があつたこと、そして他の有力者と並んで選挙顧問に推輓されたが、自ら東京より赴き、昭和三十四年四月十四日以降高岡市よしのや旅館に滞在し、顧問として被告人坂井義次、同小西弥寿一と連絡の上、選挙の形勢を観望し同候補者の当選について尽力していたことは事実であるけれども、同候補者から選挙資金の保管、支出について何等の権限も付与されて居なかつたこと、その意を承けて活動する運動員は限定されていたこと、被告人小竹与八郎、同寺嶋弥作は自己の方針にもとずき前記のごとく本件選挙運動を総括支配したものであり、土倉との連絡もさして緊密であつたとは云えず、土倉自身は選挙の開票結果も見届けることなく帰京していること等の事実に徴すれば、右土倉宗明を目して本件選挙運動の中心として選挙運動者等を指揮し、選挙運動を全面的に総括支配していた者とは到底認めることは出来ない。
以上の諸点を総合すると、要するに、前記本件選挙における総括主宰者は、被告人小竹与八郎、同寺嶋弥作の両名であり、弁護人主張のように土倉宗明でないことが認定できる。それゆえ、弁護人の主張はこれを採用するを得ない。
(法律の適用)
法律に照らすと、被告人小竹与八郎の判示第一の(一)の1乃至4の所為中各事前運動の点は公職選挙法第百二十九条、第二百三十九条第一号、罰金等臨時措置法第二条第一項に、各供与の点は公職選挙法第二百二十一条第一項第一号第三項罰金等臨時措置法第二条第一項に、各該当するところ右両者はいずれも包括一罪であり、一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから、刑法第五十四条第一項前段第十条により結局重い供与罪の刑に従い、判示第一の(二)の1乃至4、同(三)の2のイ、ロ、4のイ乃至リ、5乃至9(四)の1、2のイ、ロ、3、4、5(五)、第二の(一)、第三の(一)(二)の供与の所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第一号第三項、罰金等臨時措置法第二条第一項(判示第一の(五)、第二の(一)、第三の(一)(二)の各所為については尚刑法第六十条)に各該当し、判示第一の(三)の1、3第二の(二)の1、2の各供与の点は公職選挙法第二百二十一条第一項第一号第三項、罰金等臨時措置法第二条第一項(判示第二の(二)の1、2の各所為については尚刑法第六十条)に各該当するところ、以上の各供与は一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから刑法第五十四条第一項前段第十条第三項により判示第一の(三)の1については犯情の重い被告人泉達造に対する供与罪、判示第一の(三)の3については犯情の重い被告人古谷健治に対する供与罪、判示第二の(二)の1、2についてはいづれも犯情の重い尾形要吉に対する供与罪の各刑に従い、判示第一の(六)、第五の(一)の1乃至3、(二)(三)の各所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第三号第三項、罰金等臨時措置法第二条第一項(判示第五の各所為については尚刑法第六十条)に各該当し、判示第六の所為は公職選挙法第百八十七条第一項、第二百四十六条第四号、刑法第六十条に該当するところ、以上孰れも所定刑中禁錮刑を各選択し、以上被告人小竹与八郎の判示第一、二、三、五、六の各所為は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条本文第十条により最も重い判示第一の(二)の1の供与罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人寺嶋弥作の判示第四の(一)の所為中事前の選挙運動の点は公職選挙法第百二十九条、第二百三十九条第一号、罰金等臨時措置法第二条第一項に、供与の点は公職選挙法第二百二十一条第一項第一号第三項、罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当するところ、右は一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから、刑法第五十四条第一項前段第十条により重い供与罪の刑に従い、判示第四の(二)の1、2のイ乃至ニの各所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第四号第三項罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当し、判示第四の(三)の1のイ、ロ、2のイ乃至ニ、3、4のイ、ロ、(四)の1乃至5、(五)、(六)の1のイ、ロ、2、3の各供与は公職選挙法第二百二十一条第一項第一号第三項罰金等臨時措置法第二条第一項(判示第四の(五)の所為については尚刑法第六十条)に各該当し、判示第五の(一)の1乃至3、(二)(三)の各所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第三号第三項罰金等臨時措置法第二条第一項、刑法第六十条に各該当し、判示第六の所為は公職選挙法第百八十七条第一項、第二百四十六条第四号、刑法第六十条に該当し、以上孰れも所定刑中禁錮刑を各選択し、以上被告人寺嶋弥作の判示第四、五、六の各所為は、同法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条本文第十条により最も重い判示第四の(二)の2のイの罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人二上源介の判示第七の(一)の1、2(二)の1、2の各所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条本文第十条により最も重い判示第七の(一)の1の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人大野致正の判示第八の(一)(二)、第九の各所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項(判示第九については尚刑法第六十条)に各該当するところ所定刑中孰れも懲役刑を選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条本文第十条により最も重い判示第八の(二)の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人大坪伝平の判示第十の所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項、刑法第六十条に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、その刑期範囲内において同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人泉達造の判示第十の所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項、刑法第六十条に、判示第十一の(一)乃至(三)の各所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第一号、罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当するところ所定刑中孰れも懲役刑を選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条本文第十条により最も重い判示第十の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人辻敬一の判示第十二の(一)(二)の各所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当するところ所定刑中孰れも懲役刑を選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条本文第十条により犯情の重い判示第十二の(一)の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人松本勝二の判示第二の(一)、第三の(一)(二)の所為は各公職選挙法第二百二十一条第一項第一号第三項罰金等臨時措置法第二条第一項刑法第六十五条第二項、第六十条、公職選挙法第二百二十一条第一項第一号罰金等臨時措置法第二条第一項に、判示第二の(二)の1、2の所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第一号第三項罰金等臨時措置法第二条第一項、刑法第六十五条第二項第六十条、公職選挙法第二百二十一条第一項第一号罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当するところ、右は一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから、刑法第五十四条第一項前段第十条第三項により孰れも犯情の重い尾山要吉に対する供与罪の刑に従い、判示第十三の(一)の所為中事前運動の点は公職選挙法第百二十九条第二百三十九条第一号罰金等臨時措置法第二条第一項に、供与の点は同法第二百二十一条第一項第一号罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当するところ、右は一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから刑法第五十四条第一項前段第十条により重い供与罪の刑に従い、判示第十三の(二)の1乃至9、(三)の各所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当し、判示第十三の(四)の1、2の各イ、ロ、(五)の各所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第一号罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当するところ、以上孰れも所定刑中懲役刑を各選択し、以上被告人松本勝二の判示第二、三、十三の各所為は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条本文第十条により最も重い判示第十三の(一)の供与罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内に於て同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人坂井義次の判示第十四の(一)の所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項に、判示第十四の(二)の所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第一号罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当するところ所定刑中孰れも懲役刑を選択し、右は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条本文第十条により重い判示第十四の(一)の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人古谷健治の判示第九、十五の(一)、(二)の1乃至4、(三)の各所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項(判示第九の所為については尚刑法第六十条)に、判示第十五の(四)の1乃至3の所為は各公職選挙法第二百二十一条第一項第一号罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当するところ所定刑中孰れも懲役刑を選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条本文第十条により最も重い判示第十五の(二)の2の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において同被告人に対し主文の刑を量定処断し、被告人小笹清一の判示第十六の所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項に該当するので、所定刑中罰金刑を選択し、その金額の範囲内において、同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人西岡喜一の判示第十七、同七尾谷新二の判示第十八の各所為は夫々公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項に該当するので所定刑中孰れも懲役刑を選択し、その各刑期範囲内において、同被告人等に対し夫々主文の刑を各量定処断し、
被告人開太吉の判示第十九、同伊東覚二の判示第二十の各所為は夫々公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項に該当するので所定刑中孰れも罰金刑を選択し、その各金額の範囲内において、同被告人等に対し夫々主文の刑を各量定処断し、
被告人小竹勇一の判示第九、二十一の(一)(二)の各所為は孰れも公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項(判示第九については尚刑法第六十条)に各該当するところ所定刑中孰れも懲役刑を選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条本文第十条により最も重い判示第二十一の(一)の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人京角太作の判示第二十二の(一)の1、2の各所為は孰れも公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項に、判示第二十二の(二)の所為(包括一罪と認める)は公職選挙法第二百二十一条第一項第一号罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当するところ所定刑中孰れも懲役刑を選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条本文第十条により最も重い判示第二十二の(二)の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人大滝恒次郎の判示第二十三の所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項に該当するので所定刑中罰金刑を選択し、その金額の範囲内において、同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人小西弥寿一の判示第九、二十四の(一)(二)の各所為は孰れも公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項(判示第九については尚刑法第六十条)に各該当するところ、所定刑中孰れも懲役刑を選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条本文第十条により最も重い判示第二十四の(一)の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人佐伯久敬の判示第九及び二十五の(一)(二)の各所為は孰れも公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項(判示第九については尚刑法第六十条)に各該当するところ、所定刑中孰れも懲役刑を選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条本文第十条により最も重い判示第二十五の(二)の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
被告人水名伊作の判示第二十六の(一)(二)の各所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第四号罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当するところ所定刑中罰金刑を選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十八条第二項により各罪につき定めた罰金の合算額範囲内において同被告人に対し主文の刑を量定処断し、
尚諸般の情状を考慮し各刑法第二十五条第一項によりいずれも本裁判確定の日から被告人二上源介、同泉達造、同松本勝二、同坂井義次、同古谷健治、同七尾谷新二に対してはそれぞれ五年間、被告人大野致正、同大坪伝平、同辻敬一、同西岡喜一、同小竹勇一、同京角太作、同小西弥寿一、同佐伯久敬に対してはそれぞれ三年間、右各刑の執行を猶予し、
被告人小笹清一、同開太吉、同伊東覚二、同大滝恒次郎、同水名伊作において、右罰金不完納の場合につき各同法第十八条第一項を適用しそれぞれ主文の如く労役場留置期間を定め、
被告人小笹清一、同開太吉、同伊東覚二、同大滝恒次郎、同水名伊作に対してはいずれも情状により各公職選挙法第二百五十二条第三項に則り同条第一項の五年間の期間を三年間に短縮し、
没収及び追徴につき各公職選挙法第二百二十四条を適用して、被告人小竹与八郎より同人が同小竹勇一から返還を受けた判示第二十一の(二)の利益は没収出来ないからその価額五千円を追徴し、同寺嶋弥作より同人が同小竹与八郎より収受した判示利益(金五十八万円)中より判示関係被告人等に供与した分(金十八万五百円)を控除した残余の利益は没収出来ないからその価額三十九万九千五百円を追徴し、同二上源介より収受に係る判示利益は没収出来ないからその価額四万六千円を追徴し、同大野致正より収受に係る判示利益は没収出来ないからその価額一万七千円を追徴し、同大坪伝平より同人が同泉達造と共同で同小竹与八郎から収受した利益(金三万円)中、同泉達造より返還を受けた押収に係る現金二万五千円(証第二号)は没収し、残余の利益は没収出来ないからその価額五千円を追徴し、同辻敬一より同人が同小竹与八郎から収受した利益(金一万二千円)中押収に係る現金一万円(証第三号)を没収し、残余の利益は没収出来ないからその価額二千円を追徴し、同松本勝二より同人が同小竹与八郎より収受した利益(金五万七千円)中より判示第三者に供与した分(金一万一千五百十五円)を控除した残余の利益は没収出来ないからその価額四万五千四百八十五円を追徴し、同坂井義次より同人が同小竹与八郎から収受した利益(金三万円)中押収に係る現金一万八千円(証第五号)を没収し、判示中山義一に供与した分(金三千円)を控除した残余の利益は没収出来ないからその価額九千円を追徴し、同古谷健治より同人が同小竹与八郎、同寺嶋弥作から収受した利益(金十万七千円)より判示関係被告人に供与した分(金六万円)を控除した残余の利益は没収出来ないからその価額四万七千円を追徴し、同小笹清一より同人が収受した判示利益である押収に係る現金一万円(証第六号)を没収し、同西岡喜一より同人が収受した判示利益は没収出来ないからその価額一万五千円を追徴し、同七尾谷新二より同人が収受した判示利益である押収に係る現金三万五千円(証第七号)を没収し、同開太吉より同人が収受した判示利益は没収出来ないからその価額一万円を追徴し、同伊東覚二より同人が収受した判示利益である押収に係る現金一万円(証第八号)を没収し、同小竹勇一より同人が同小竹与八郎、同寺嶋弥作から収受した利益(金一万七千円)中より同小竹与八郎に返還した分(金五千円)を控除した残余の利益は没収出来ないからその価額一万二千円を追徴し、同京角太作より同人が同寺嶋弥作から収受した利益(金一万三千円)中より判示第二十二の(二)の饗応接待分中右収受した利益で支弁した分(金五千五円)を控除した残余の利益は没収出来ないからその価額七千九百九十五円を追徴し、同大滝恒次郎より同人が収受した判示利益である押収に係る現金一万円(証第九号)を没収し、同小西弥寿一より同人が収受した判示利益は没収出来ないからその価額一万七千円を追徴し、同佐伯久敬より同人が収受した判示利益は没収出来ないからその価額一万五千円を追徴し、同水名伊作より同人が収受した判示利益である押収に係る現金一万五千円(証第十号)を没収し、訴訟費用につき刑事訴訟法第百八十一条第一項本文を適用し、主文末項掲記の如くその負担を定めることとする。
被告人京角太作に対する本件公訴事実中、昭和三十四年六月十九日附起訴状の公訴事実第二十一の(二)の「同被告人が前記候補者の選挙運動者森田昇から同月十日頃同選挙事務所で同候補者に当選を得しめる目的で同候補者のため投票取纒等の選挙運動を依頼され、その報酬等として供与される情を知りながら日本酒一升入壜詰六本(時価二千八百八十円)の供与を受けたものである」旨の点について考察するに、被告人京角太作の司法警察員に対する供述調書、(検証第二百五十一号の分)並びに検察官に対する供述調書五通、森田昇の検察官に対する昭和三十四年五月十九日附供述調書によれば、同被告人は森田昇から右公訴事実記載の日時場所において、同記載の日本酒六本の提供を受けたことは認められるけれども同時に右日本酒六本の授受の趣旨は寧ろ被告人京角に於て前段認定の判示第二十二の(二)記載の十九名に対し、選挙運動の報酬として供与することを委託されたものとみるのが相当である。
ゆえに右公訴事実は一応公職選挙法第二百二十一条第一項第五号の受交付罪に問擬すべきものと解されるところ、右判示第二十二の(二)の関係証拠によると、被告人京角は右趣旨に従い前記日本酒等をもつて同判示の十九名に対し饗応接待したことが認められる。
されば、前記公訴事実は結局判示第二十二の(二)の供与罪に吸収され、したがつて別罪を構成しないものと解する。
よつて主文の通り判決する。
(裁判官 水島亀松 平井哲雄 木村幸男)
(選挙運動費用収支報告書略)